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労働新聞 通信・投稿

自衛隊行事に参加して
「有事だョ!全員集合」とは?

駐屯地で戦争訓練を披露

東京都・睦 三郎

 東京都練馬区の陸上自衛隊練馬駐屯地に司令部を置く「陸自第一師団」で4月7日、創立62周年記念行事が催された。この式典の案内ポスターが4種類作成され、共通テーマは「戦う? 13・2%」となっている。
 この4種類のうち一つに「有事だョ!全員集合」との文言があり、まるで国家総動員じゃないか! とネットでも大炎上していると友人から聞き、また「戦う? 13・2%」とは何かと興味がわき、教えてくれた友人と記念行事に行ってみた。
 最寄り駅から桜並木を通り、徒歩10分ほどで式典会場「陸自練馬駐屯地」に到着、入り口脇の検問所で持ち物検査と金属探知機検査を受け入場した。


自衛隊によるポスター

 式典の観覧者の半数ほどは招待者・隊友会・自衛隊員家族であり、一般の観覧者は思ったより少ない。
 最初、兒玉・第一師団長の式辞で始まり、話の中心はテーマ「戦う? 13・2%」についてで、次のように説明した。
 「世界79カ国を対象に世界価値観調査が行われ、『戦争が起きたらあなたは国のために戦うか?』との問いに、『戦う』と回答したのは、日本はたった13・2%。世界79カ国のうち最下位だ。下から2番目のリトアニアは32・4%。中国は88・6%、ベトナムは96・6%と高い数字だ。この数字を見て周辺国はどう思うか? 日本は侵略しても抵抗しない国と勘違いするのでは。防衛力は5年間で43兆円増と抜本的に強化されたが、わが国を守るためには自衛隊を強化するだけでなく、国民の意思と能力を世界に示す必要がある。今年から3年以内で、また世界価値観調査が行われる。あなたのところにも来るかもしれない。祖国を守る意思を、相手国に示すことが不可欠だ。昨年の内閣府世論調査では、戦争になったら自衛隊に志願するは、わずか4・7%しかいない」と、無念そうに述べた。
 支配階級は安保3文書や防衛費2倍化と、日米同盟下での対中国戦争への戦時体制を急ぐなか、「世界価値観調査」で日本国民の戦う意思が想定外の世界最下位に愕然(がくぜん)としたことが、師団長の式辞内容に危機感として表れている。
 自衛隊員の士気にも影響するのだろう。師団長は一般観覧者に対し、「戦うとは武器を取って戦うだけでなく、政治・経済を動かすことや、普段の仕事をしっかり続けることも、国のために戦うことだ」と言うありさま。よほど今回の「世界価値観調査」最下位を恥だと認識し、「国のために戦う」という数字を是が非でも上げたいのが伝わる。
 この後、小池都知事が「首都東京の防衛をしっかりと」の祝辞、1都6県を統括する第一師団各部隊の訓練となった。
 人質を取るテロリストを警棒と格闘術で撃退・確保/敵の航空機・ヘリを対空誘導弾で撃破訓練/サリン等の劇薬をまく敵・武装工作員の殲滅(せんめつ)と除染訓練/敵戦闘員を多用途(武装)ヘリで空中より銃撃訓練/多用途ヘリよりレインジャー部隊降下、敵戦闘員を銃撃・殲滅/ビルの立てこもり武装ゲリラを撃退・確保。  自動小銃の連射音が間断なく会場内に響き渡る中、さらに軽装甲機動車からの機銃連続射撃、大きな砲塔をもつ16式機動戦闘車の砲撃は、近くで雷が落ちたようなすさまじい炸裂(さくれつ)音で、まさにここは戦場なのかと思うほどだ。


実戦さながらの訓練を見せる自衛隊戦車

 これまで東京都・市合同総合防災訓練に何度か参加し、会場で自衛隊がトリアージや、カレーを提供する給食活動、公道を走る87式偵察警戒車(装甲車)を見たことはあったが、この式典で自衛隊の本務は戦争だと露(あら)わになり、目前に有事が迫っている(絵空事ではない)という観覧者へのメッセージだなと感じたし、治安弾圧訓練にも思えた。
 そのなかで気になったのは「第34普通科連隊」の機動戦闘車の大きな部隊旗に「橘」の文字があり、何だろうと近くの自衛隊員に聞いたところ、戦前の軍神・橘中佐(注)の精神を受け継ぐべく掲げているというから驚きだ。
 1月に靖国神社へ自衛隊幹部と部隊が参拝し問題になったが、いまだに軍国主義の亡霊が見え隠れしている。
 この騒々しい「軍事アトラクション」は12時過ぎに終わり、敷地内各所では「装甲車体験試乗」「防護マスク試着体験」「子供用自衛隊戦闘服試着」「基本装備の自動小銃・拳銃・銃剣の展示」、地方協力本部による「入隊相談」とアプリ登録で陸自グッズ(缶バッジ・ステッカー)配布、陸自グッズの販売、屋台での飲食コーナーなどがあった。
 一般の観覧者、とりわけ小中高生のいるファミリー層は、テレビやネットニュース、新聞等で自民党副総裁・麻生がよく口にする「台湾有事は日本の有事」「日本、台湾、米国は中国と戦う覚悟を」などの発言が、年寄りの世迷(ま)い言ではなく、実際の戦争を見据えたものだと、このリアルな戦争訓練を間近で見て怖いと思ったのではないか。

(注)橘周太・陸軍中佐 日露戦争の遼陽の闘いで戦死。

【参考】“大東亜戦争”呼びだけではない…”天皇の軍隊”を自称、日教組を敵視!自衛隊がネトウヨ化する理由(女性自身)


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