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2021年3月25日号 1面

日米2+2
8年ぶり「中国」名指しで
対抗を強化

アジアを緊張させる危険な道
平和・共生の進路に転換せよ

 日米両政府は三月十六日、東京で外務・防衛担当閣僚協議(2+2)を開いた。バイデン新政権が発足後、初めての開催である。
 発表された共同発表文書は、日米同盟を「インド太平洋地域の平和、安全、繁栄の礎」などと誇り、「既存の国際秩序と合致しない」と、中国への敵視と対抗をあらわにさせた。
 中国の国内問題である香港と新疆ウイグル自治区を名指しし「人権」状況への「深刻な懸念」を示した。海警法などへの「深刻な懸念」と「台湾海峡の平和と安定の重要性」も明記した。  また、「核を含むあらゆる種類の米国の能力による日本の防衛」と、米国の「核の傘」を改めて明記した。菅政権は「日米同盟をさらに強化するために能力を向上させる」と約束、日米共同訓練の強化でも合意した。米軍と航空自衛隊は2+2の前日、沖縄県那覇市の北西空域で防空戦闘訓練を行い、対中国のデモンストレーションを行った。
 沖縄県名護市辺野古の新基地建設を「唯一の解決策」と再確認した。在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)に関する特別協定の改定でも合意、尖閣諸島への日本の施政権にも言及した。
 これらの方策を加速させるため、年内に再度、2+2を行うことでも合意した。
 二〇一三年の2+2では中国を名指ししたが、中国に「責任ある建設的な役割」を求める内容で、今回とは内容が大きく異る。日米2+2の共同宣言で中国を名指ししたのはこの時以来で、八年・五回ぶりのことである。  今2+2は、対中国で「日米同盟強化」をエスカレートさせることを宣言したのである。アジアの軍事的緊張が著しく高まっている。

海警法、台湾問題で敵視
 中国が定めた海警法は、海警局を準軍事組織と位置づけるものである。確かに、中国船の度重なる尖閣諸島近隣への接近など、尖閣諸島へのわが国の主権を脅かす可能性がないわけではない。
 だが、米国でも日本でも、沿岸警備を担当する組織(日本では海上保安庁)による武器使用は国内法で規定されている。例えば、米国の沿岸警備隊は「第五の軍隊」と位置づけられており、大統領命令によって海軍の一部として運用される。日本でも〇一年、海上保安庁の巡視船が「不審船」を銃撃・撃沈している。
 中国の海警法は、「国際法違反」といえるレベルのものではない。米日が海警法に関して、中国を非難する資格もない。
 台湾は中国の一部で、中国政府は台湾を「核心的利益」と位置づけている。わが国は日中共同声明(一九七二年)において、台湾を中国の一部とする中国政府の立場を「十分理解し、尊重」すると約束している。「台湾海峡の平和と安定」は中国の国内問題であり、外国が干渉すべきではない。
 しかも、わが国は日清戦争の結果として、台湾を中国(清朝)から奪い取った(下関条約・一八九五年)。その後、数々の抵抗運動の武力弾圧、「皇民化」などの植民地支配を行った。こうした歴史経過からも、台湾問題に干渉してはならないのである。
 米軍は、トランプ前政権時代から、海軍に頻繁に台湾海峡を通過させて中国を挑発・けん制している。バイデン政権は、これを継続・強化しようとしている。これへの追随は、アジアの緊張を高め、わが国の孤立を深める亡国の道である。

国内が帰すうを決する
 対中強硬策のエスカレートは、米日の抱える危機の深さを証明してもいる。
 リーマン・ショック以後、経済成長率は低迷、米日は金融緩和から曲折はあれど抜け出せず、国家財政赤字も累積している。なかでも米国は、人種問題や麻薬、銃犯罪など社会的危機が深まり、階級矛盾が激化している。  コロナ禍は、危機をさらに深化、加速させている。昨年の大統領選挙とその後の推移は、米国内が一種の「内戦状態」にあることを示した。
 対する中国は、問題を抱えつつも、すでに購買力平価国内総生産(GDP)で世界一となり、名目GDPでも米国を追い越す日が近づいている。科学技術の進歩も著しく、対外債権も増大している。米ドル体制を相対化させる、「デジタル人民元」の正式発行も近い。軍事力においても、すでに自国沿岸部・西太平洋においては、米国に対して相対的優位にある。
 米国は日本との間の同盟だけでなく、オーストラリア、インドを巻き込んだクアッド、さらに米日韓同盟を活用して、アジア・太平洋に中国包囲網をつくり出そうとしている。
 だが、インドは伝統的な「非同盟政策」を放棄する意思なく、オーストラリア国内にさえ対中強硬論には異論が強い。先のクアッド首脳会議の共同宣言でさえ、中国を名指しすることはできなかった。先日の米韓2+2も同様に、中国の名指しはできなかった。
 わが国でさえ、「中国抜き」では経済は成り立たなくなっている。対中国での「政経分離」を中長期に続けることは不可能である。対米・対中政策をめぐる国論、支配層内の分岐が深刻化することは必至である。
 米国自身も、中国市場にひきつけられる企業の意思をまったく無視することは難しい。中国に頼らない半導体などのサプライチェーン(供給網)構築をめざしているが、容易ではない。
 米中覇権争奪が長期化することは避けがたく、帰すうを決するのは、双方がそれぞれの国内矛盾を抑えきり、政治を安定させることができるかどうかである。

対抗軸を示せぬ野党
 こうした弱さを知っているからこそ、バイデン政権は最初に対面する外国首脳に菅首相を選ぶなど、日本をひきつけようと腐心している。日本の協力なしに、米国のアジア戦略は成り立たないからである。
 わが国が独立・自主、アジアとの共生の進路をとれば、米戦略に痛撃を与え、アジアと世界の進歩に大きく貢献できるのである。
 しかるに、議会内野党は菅政権の進める危険な日米同盟強化策動に対抗できず、追随している。
 立憲民主党の執行部は2+2の翌日、米戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長のマイケル・グリーン氏とオンライン会談を行った。同氏はクリントン政権のブレーンで「日米安保再定義」(一九九六年)や「新ガイドライン策定」を主導した、「知日派(ジャパン・ハンドラーズ)」の一人である。
 同氏は「日米関係強化のためにも、ぜひ野党の意見を聞きたい」と立民に秋波を送り、枝野代表はこれを「歓迎」、「健全な日米同盟を基軸とすることを党の綱領でうたっている」と自党を宣伝した。また「日米韓の連携、さらにオーストラリアやインドなどとの関係を含め、対話を重ねたい」と、米国が主導する対中国包囲網への参画を公言したのである。
 菅政権の進める日米同盟強化と闘うどころか、野党の立場から支えているのだ。
 「野党共闘」一辺倒の共産党は、この立民をまったく批判せず、追随している。さらに、中国への「制裁」を公言して米国を喜ばせている。米日支配層に政権入りを認めてもらうための、浅ましい策動である。
 政府・与党への政治的対抗軸を立てられず、追随する野党には、一切の幻想を抱くことはできない。アジアの平和を願う労働組合が支持できる政党ではないのである。
 労働組合、先進的労働者は、独立・自主、アジアの共生の国の進路を切り開く闘いの先頭に立つとともに、自らの革命政党を鍛えなければならない。(O)


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